先日、工事中の道をあるいていたら、サンダルの裏に土がたくさんくっついてとても歩きにくかったです。なんでかなぁ、と考えて、普通、ひとが歩く道にはちゃんとアスファルトや砂利が敷いてあることに気がつきました。つまり泥が靴底にくっつかないよう、気配りが行き届いているんですね。そこで思い出したのが、ダグラス・マレーの紹介していたこのことばです。
運は、設計の残りかす
〜〜 ブランチ・リッキー 〜〜
ダグラス・マレー(Douglas Murray)は、イギリスの作家、ジャーナリスト、政治評論家です。保守的な立場から時事問題を論じつつ文明批評を展開しています。『西洋の自死』(2017年)、『群衆の狂気』(2019年)を執筆しており、特に西洋文化、移民、アイデンティティに関する議論で知られています。
マレーの弁舌は、英語をとても文化的に使いこなすイギリス人の中でもとくに秀逸です。ゲイであるということもあってオスカー・ワイルドとかなり被りますが、ワイルドからちゃらちゃらしたところをとって、その隙間を英国男子のプライドで補ってあげるとダグラス・マレーになる、と考えていただければいいかと思います。
以下は、ジョー・ローガン・エクスペリエンスに登場したときのトークの一部です。
0:00 よく言われますよね、「自分はラッキーだった」って。自分でもつい「いや、運が良かっただけなんだ」って言っちゃうことがあるんです。もちろん、人生にはそういうタイミングとか場所が大事なときがあります。健康も大切です。でも実はもっと大事なことがあります。それが、一生懸命働くことなんです。
0:28 で、ある時に気づいたんです。「自分はただ運が良かっただけだ」って言うのは、自分の努力を軽く見てるんじゃないかって。誰かに「そんなこと言うなよ、ちゃんと頑張ってるじゃん」って言われて「確かにそうだなぁ」って思ったんです。まぁ「運が良かった」って言うのは、他の人に「ぼくそんなに頑張ってないから、きみも頑張らなくても大丈夫さ」って感じで相手を立てる意味もあるんですけどね。でも、これって何かを見過ごしている。
1:00 ぼくの本の最後で引用したブランチ・リッキーは、アメリカ合衆国オハイオ州出身の元プロ野球選手(捕手)・監督・プロ野球球団経営者。の言葉がまさにそれなんです。「運は設計の残りかすだ」ってね。つまり、「運」って、たぶん、ただの偶然じゃなくって、ちゃんとした計画や努力の結果のなずなんです。
1:20 例えば、「アメリカに生まれてラッキーだった」ってよく言うけど、それは一面では真実です。たとえば、モガディシュとかで生まれてたら、状況は全然違っただろうしーー。でも、それも前の世代が良い選択をしてきたからなんですよ。ただのラッキーじゃないんです。
1:58 例えば、アメリカで言論の自由があるのも、ただの運じゃない。確かにモガディシュじゃなくてアメリカに生まれたのは運だけど、アメリカがこういう状況になったのはそれが計画と努力の結果だからで、つまり「設計の残りかす」なんです。先人たちが賢明にものごとを決めたということですよ。後世のことを考えつつ慎重に決定して、国をうまく作り上げた結果なんです。
2:26 ヒラリー・マンテルの小説で、フランス革命のことが書かれてて面白かったんですけど、議会が王を処刑したあとで最初に集まったとき、人びとはさかんに権利について語りはじめたんですが、マンテルはこう書いています。「このときこそ、法律について話すべきだった」ってね。でも、権利の話のほうが面白いから、法律の議論は後回しになったというわけなんです。それで、恐怖政治とかが始まっちゃった。
3:00 だから、「運」ってもっとちゃんと考えるべきなんですよ。ぼくらが「運が良い」と感じるのは、じつはぼくらにものごころがつく前から他の人たちが良い決断をしてきてくれた結果なんです。ぼくらのために、親とか政治家とかがね。ものごとは、たんにそこらじゅうひらひら舞い上がっているわけじゃない。賢く決断することやいっしょうけんめい努力することでもある。そうやって初めて自分がラッキーだと感じられるようにります。
3:40 逆に、怠けたり、やる気がなかったり、他人を責め続けたりすると、そのうち「自分は運が悪い」と感じるようになります。それって、国全体でも同じなんですよね。
4:01 例えば、ベネズエラとかは「運が悪い国」って言われるけど、それもただの運じゃなくて、政治家がひどい決断をしてきた結果なんですよ。ベネズエラはノルウェーと同じくらいエネルギー資源に恵まれているけど、ノルウェーに住んでるほうがずっといいですよね。なぜかって言うと、ノルウェーではより良い選択がされてきたからです。
4:39 そういうのが具体的にどんな選択なのか、きちんと検証しなきゃいけないって思うんです。成功と失敗を分ける要因について、もっとしっかり考える必要があるんです。みんなやりたがらないんですけどね。
コメント